photo:佐野篤
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小林淳一
写真家・佐野篤が語る、相米慎二
ミニシアター×オンラインシネマイベント
「没後20年 作家主義 相米慎二
〜アジアが見た、その映像世界」
予告編。
モノクロの相米慎二の肖像に、
もんた&ブラザーズ「赤いアンブレラ」が流れる。
「ラブホテル」のエンディング曲である。
「雨が降ってしまって、どうしようかなと」
予告編で流れるすべての写真を撮影した、佐野篤は、言う。
「場所は代々木公園。
わざわざ外にしたのに、雨が降ってきて。
撮影場所に迷っていた。 なかなか決まらないから、普通なら文句を言う人もいるでしょう。
でも、相米さんは、ゆったりと待ってくれたね。
それが、なんか嬉しかった。
出逢ったのは、「東京上空いらっしゃいませ」の頃だから、1990年くらいかな。
それから、亡くなる2001年までの付き合いだったけど、仕事はこれだけですね。
相米さんを撮ったのは、この1回だけ。
連載のシリーズがあって、空きがあったから、「出る?」って聞いて。
「出る」って。
いつ撮ったのかも、覚えていないんだよね」
大判のモノクロのネガフィルム24枚。
それが入った箱には、1990.4.17と記されている。
それが果たして、撮影日なのかはわからない。
「この撮影をしてから、グループで飲んでいても、僕に声をかけてくれるようになってね。
「佐野、ゴルフ連れていけよ」って、いつも言われていました(笑)。
当時、僕は東京で写真家として単身赴任をしていて。
妻と娘は、愛知にいました。
相米さんが愛知の妻の実家に来たことがありましてね。
「お引越し」の主演女優を探していたときで、うちの娘がちょうどその年頃だったので、逢ってみたいと。
もちろん、その“オーディション”には、受かりませんでしたが(笑)。
ちょうど、そのとき、蒲郡で、年に1回の三谷祭りをやっていて。
それも見たかったんじゃないかな、きっと。
一緒に祭りに行ったら、じーと、祭りを見つめている。
その情景はよく覚えているなあ。
妻の実家に行ったら、凄い人数が集まっているわけ。
その人たちが、ほとんどいなくなってね。
そしたら、義父が、祭りの踊りを始めたんですよ。
そしたら、今度はそれに合わせて、叔父が笛を吹きはじめて。
何回も祭りに行って実家にいっているんだけど、そんなことはじめてだったんですよ。
なんか相米さんに申し訳ない、と思って。
それで、相米さんのほうを見たら、
踊っている義父と笛を吹いている叔父を、嬉しそうに、じーと見てるんですよ。
あのシーンは忘れられないなあ。
この写真は、相米さんと仲がよくなってからだったら、撮れなかったかもしれないですね。
雨が相米さんの映画と関係が深いと知ったのも、ずいぶん後。
相米さんは、何かをじーと見てる人、という印象でしたね。
だから、こわい感じもした。
自分が全部、見透かされてるようでね。
それは最後まで、そうだったかなあ。
想い出は、グループでソウルにいったとき。
愉しかったなあ。
相米さんは、韓国で何かみたかったんだと想う。
それが何だったかはわからないけど」
この写真を気に入って、相米慎二は、部屋に置いていたという。
ミニシアター×オンラインシネマイベント
「没後20年 作家主義 相米慎二 〜アジアが見た、その映像世界」
2021年2月6日(土)~2月19日(金)
渋谷 ユーロスペース
予告編
「没後20年 作家主義 相米慎二 アジアが見た、その映像世界」