さまざまな考えに出逢い、
自らの想いを深めるための一冊
静かに、しかし、確実に広まっていくーー。
10月8日(土)に渋谷のユーロスペースで公開された「アメリカから来た少女」。
その波紋は広がっている。
ラスト、ファンイーがアパートの窓から下を見て、
妹が帰ってくるのを迎えるところで終わる。
あえて妹の姿を見せず、“ 感動的 ” になるのを
抑えているのが好ましい。
川本三郎(作家、評論家)
【馬】は、孤独のメタファーだと思います。
馬には、【仲間】がいない。
つまり、種として 群れていない。
少女の孤独に、白い馬という
孤独な存在を組み合わせたのだと思います。
北村道子(スタイリスト)
物語を追うことが映画じゃない。
やっぱり、そこに何が映っているか。
現場で何が生まれるか。
それを見つめることの豊かさが、
ここにはあります。
広瀬奈々子(映画監督)
「男の子になりたい」
来世で別の性を望んだ母のこの言葉には、
乳がんを患い、それでも「母」であり続ける
母にとって、女性であることがいかなる意味を
もたらしうるのかを思索せずにはおれない。
児玉美月(映画執筆家)
ラストシーン。勢いよく
開け放された玄関のドアに、
風が優しく吹き抜ける。この先も、
家族は衝突することがあるのかもしれないが、
その度にこうやってまた、開けられるのだろう。
小橋めぐみ(女優)
かつて少女だった者と、
いま現在少女と呼ばれる者。
新しいものと古いものとが混在し
無理に織りなされた層はぼろぼろと
剥がれ落ち、やがて剥き出しの壁が現れる。
月永理絵(ライター、編集者)
この監督はまだ若い。自分の思春期からそう離れているわけではないのです。
まだ非常に近いところにいる。だから、【少女】の感情を捉えることができるのです。
つまり、ここで描かれていることは、ぼんやりとした記憶ではなく、強いリアル。
それだけに、舞台となる2003年当時の台湾の雰囲気も、
ごく身近に感じられる作りになっている。ここが素晴らしい。
ホアン・シー(映画監督)
本書「アメリカから来た少女 BOOK」のレビューから抜粋されたコメントだ。
映画パンフレットは日本の文化だ。
しかし、あえてパンフレットと名乗らず、BOOKとした。
この<BOOK>は、単なる作品紹介ではなく、映画を読み解くためのテキストである。
「アメリカから来た少女」は難解な映画ではない。
しかし、見終わった後、さまざまな想いが残る。
あの<馬>は何だったのか?
あの<風>は何だったのか?
あの<口笛>は何だったのか?
あの<耳かき>は何だったのか?
監督のロアン・フォンイー、出演のカリーナ・ラム、カイザー・チュアン、ケイトリン・ファン、オードリー・リン。
全員のインタビューが載っている。
監督の言葉からだけでは、解けないかもしれない。
しかし、この1冊を読めば、それぞれの言葉を紡ぎ、全体像が浮かびあがってくる。
<母>で観た人も、<長女>で観た人も、そして、<母と娘>で観た人も。
<父>で観た人もいた、<妹>で観た人もいた、<家族>で観た人もいた。
<馬>で観た人もいた、<台湾>で観た人もいた、<宗教>で観た人もいたーー。
当たり前だが、映画には見た人の数と同じだけの答えがある。
その、あなたのひとつの答えに近づくための<BOOK>である。
その、想いもしなかった他の人の見解に逢える<BOOK>である。
観る前に読んでもいい。観てから読んでもいい。
映画とは、体験である、ということが、よくわかり、もう一度、見たくなるだろう。
「アメリカから来た少女」の全国公開がこれから続くーー。
「アメリカから来た少女」BOOK
発行:A PEOPLE
定価:1,430円(税込)
公開劇場、渋谷TSUTAYA、アマゾンにて発売中
アメリカから来た少女
監督・脚本:ロアン・フォンイー
製作総指揮:トム・リン
撮影:ヨルゴス・バルサミス
出演:カリーナ・ラム/カイザー・チュアン/ケイトリン・ファン/オードリー・リン
2021年/台湾/101分
原題:美國女孩|英題:American Girl
©Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
配給:A PEOPLE CINEMA
ユーロスペース(東京)にて公開中 全国、順次ロードショー