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A PEOPLE CINEMA

アメリカから来た少女
ケイトリン・ファン

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小田香


私の中で生まれた、
大きな変化だと思います

初めての映画で主演に抜擢され、目をみはるような演技を見せて絶賛され、金馬奨はじめ各賞を受賞したケイトリン・ファン。出演の経緯を聞いた。

「オーディションを受けたのは、夏休みにちょっと試してみようかな、という程度の軽い気持ちからでした。お父さんからも『受からなくても、いい経験になるから』と言われて受けたんです。監督とお会いした時はすごく緊張していました。それに、私以外にもたくさんの素晴らしい方々がオーディションを受けていると聞いていたので、自分が選ばれるとは夢にも思っていなかったです」

演技経験は全くなかったが、撮影に入る前に監督と両親役のカリーナ・ラムとカイザー・チュアン、妹役のオードリー・リンと過ごす時間を多く持てたことが演技の助けになったと語る。

「最初にカイザーさんと衣装合わせをしている時にお会いして、二人でジェンガをして遊びました。2回目は家族4人でランチを食べました。そのあとでボーリングに行って、お父さんと私、お母さんと妹の2チームに分かれて、負けた人が歌とダンスをするというルールで対戦したんですが、私たちが勝ちました。とても面白かったです。そんな風に撮影前に遊びに行ったりご飯を食べたりして親しくなっていたので、現場ではリラックスして臨むことができました」

彼女が演じたのは、ロアン・フォンイー監督の体験が投影された主人公ファンイー。母親の病気でアメリカから台湾へ戻り中学に入るが、新しい環境になかなか馴染めない。周囲と打ち解けられず、口数少ないファンイーとは共通点があると感じたそうだ。

「ファンイーは何か思っても口には出さず、まずは自分の中に抱えてしまう人だと思いました。実際の私も彼女と同じように、思っていることを人にはあまり言わないほうなので、そこが似ていると感じました。あと、私も彼女のように、思っていることを突然口にして両親を戸惑わせるところがあって、そこも似ているようです。それでもやはり、彼女の考えを理解できない部分もありました。ファンイーと私では生活の状況も違いますし、経験してきたことも違いますから。そういう時は監督に相談して、監督ご自身の経験を聞いて、そうしたら彼女の気持ちが理解できるようになりました」

そもそも2003年という映画の背景自体、ケイトリンがまだ生まれる前のこと。時代の差も感じたことだろう。

「一番感じたのは、今のようにスマートフォンがなくて通信環境が違うということです。当時は人と連絡するにしても家の電話を使ったり、ネットカフェでインターネットに接続する必要があったりしたんです。それもすごく速度が遅いですよね。そういう面では大変だったんだなと感じました。そして、スマホがないので、漫画を読むのに本屋に行って雑誌を買うというのも。今は漫画を紙で読む機会はないですから。でも、そうしたことはどれも面白いと思いました」

もちろん、楽しいばかりでなく、大変なことや悩んだシーンもあったが、この作品が彼女を大きく成長させた。

「難しかったのは馬との場面です。動物との演技があんなに難しいとは思っていませんでした。それに、馬に会えて喜んでいる状態から、がっかりして感情を爆発させるという重いシーンを、全部一人で表現しなければならなかったのは大変でした。好きなのは、夜に妹と外でお菓子を食べるシーンですね。すごく静かで心に残っています。この映画に出て、少しだけ自分の中で責任感のようなものが生まれた気がしています。そして、演技をするということは誰かが助けてくれるわけではなく、自分がその役を表現しなければいけないのだということを学びました。それは私の中で生まれた、大きな変化だと思います」



アメリカから来た少女
監督・脚本:ロアン・フォンイー
製作総指揮:トム・リン
撮影:ヨルゴス・バルサミス
出演:カリーナ・ラム/カイザー・チュアン/ケイトリン・ファン/オードリー・リン
2021年/台湾/101分
原題:美國女孩|英題:American Girl
©Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).
配給:A PEOPLE CINEMA

10月8日(土)よりユーロスペース(東京)にてロードショー


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