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「台風クラブ」©ディレクターズ・カンパニー

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第50回湯布院映画祭
特集「俳優・三浦友和~挑み続ける役者魂」

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小林淳一


変わることの難しさと
それを乗り越えた俳優の軌跡

若手からベテランへ――。
俳優はどこでチェンジするのか。

この大問題に対し、「変わらない」ということをやったのが、トム・クルーズであり、日本なら織田裕二らが挙げられるように思う。これはこれでかなり凄いことだと思う。

本人はたいへんだったろうが、自然に見事にモデルチェンジした俳優としてなら柳楽優弥や山田孝之が挙げられるだろう。

イケメン俳優の時代にそもそもチェンジするのかということは現在ではあまり見えてこない問題となっている。

近年では、明らかに意識的にチェンジして成功したのは、「孤狼の血」「新聞記者」などの松坂桃李ではないだろうか。

問題を戻そう。
日本でもっともこの「若手からベテランへ」問題が難しかったのが、三浦友和である。

1980年、山口百恵と結婚。
日本最大のスーパースターが引退し、ひとりの男性の妻となるというのである。

日本中がその後の三浦友和を見ている、そんな状況だった。

すでに死語だが、三浦友和は“青春スター”だった。

萩原健一でも松田優作でも水谷豊でもない。
郷ひろみや西城秀樹も映画に出ていたがそのカテゴリーでもない。
近かったのは、草刈正雄、中村雅俊、田中健、国広富之というところか。

今回、50回目を迎える湯布院映画祭で「俳優・三浦友和」の特集が行われる。

そのセレクトは本人が関わっていると思われるが、示唆的だ。

山口百恵・三浦友和作品から「ホワイト・ラブ」(1979)。
東宝の青春映画から「黄金のパートナー」(1979)。

若手としての三浦友和の素晴らしさが伝わる。
ここをなくして、このプログラムはあり得ない。

そして、「若手からベテランへ」という問題をクリアしたのが「台風クラブ」である。

1981年の「獣たちの熱い眠り」で明らかにイメチェンに失敗した三浦は、「大日本帝国」(1982)、「海峡」(1982)、「さよならジュピター」(1984)といった大作出演に舵を切った。

しかし、イメージは変わらなかった。

そこからの「台風クラブ」(1985)である。
相米慎二との出会いは決定的に三浦友和を変えた。
一作でここまで変わる俳優もいまい。

それからの三浦は「マリリンに逢いたい」(1988)でも「無能の人」(1991)でも、どんな端役でも強烈な印象を残す無双状態に入る。

そして、今回貴重な上映となるドラマ「盗まれた情事」(1995「土曜ワイド劇場」)は神代辰巳の遺作である。

これもまた、東宝青春映画として撮られた1979年の神代辰巳監督「遠い明日」(1979)との繋がりから生まれた作品であろう。

今回、監督がゲストとして登壇する諏訪敦彦の「風の電話」(2020)、三宅唱の「ケイコ 目を澄ませて」(2022)(「台風クラブ」では榎戸耕史監督が登壇)。

そして、三浦友和の近年の代表作と言える「葛城事件」(2016)。

このラインナップは、“そうすることが日本一難しい”と言われたひとりの俳優の「若手からベテランへ」、そして今を綴った、観るべき成功の軌跡である。


第50回湯布院映画祭
特集「俳優・三浦友和~挑み続ける役者魂」

(上映作品)
「ホワイト・ラブ」
「黄金のパートナー」
「葛城事件」
「盗まれた情事」
「台風クラブ」
「風の電話」
「ケイコ 目を澄ませて」
「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」

会場:ゆふいんラックホール1F大ホール
会期:8月22日(金)―23日(土)
*湯布院映画祭の会期は8月21日(木)―24日(日)


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