「青春の殺人者」(c)1976 今村プロ/東映
私たちは、まだ「映画作家 長谷川和彦」を知らない
その凄さを。その深さを。その哀しみを
7月9日(土)より、渋谷 ユーロスペースにて、「長谷川和彦 革命的映画術」が開催される。
監督作品2本、脚本作品4本、出演作品1本を上映する。
時代に、社会に、組織に反逆し続ける男たち。
そんな若者たちの闘いを、タブー無き鮮烈なストーリーで描き出し、1970年代後半、映画界に革命を巻き起こした男、長谷川和彦。
それは日活ロマンポルノ「性盗ねずみ小僧」の脚本(1972)から始まった。
名もなき男が江戸の街をひっくり返す痛快艶笑時代劇「性盗ねずみ小僧」。
警察官たちが強盗団に化けて暴走する衝撃作「濡れた荒野を走れ」(1973)。
弁護士の卵ショーケンの脱力的キャラクターに孤独の影を深く刻んだ、哀しみの名作「青春の蹉跌」(1974)。
アメリカンニューシネマ大正アナーキー版☓歌謡モノローグ集ともいうべき、傑作「宵待草」(1974)。
こうした脚本家としての優れた技量と才能を磨きつつ、今村昌平監督「神々の深き欲望」(1968)での助監督(超苛酷な長期沖縄ロケ!)などを経て、30歳にして1976年、「青春の殺人者」で監督デビュー。
「青春の殺人者」は実際に起きた事件をベースにした中上健次の小説「蛇淫」が原作。
22歳の青年が発作的に父親と母親を殺害し、ふたりを海に捨てる。
衝撃的なストーリーながら、映画に暗さは微塵もない。
犯罪でも殺人でも悲劇でもなく、物語はその先に突き抜けたような「明快な、ある解放」にたどり着く。
「音楽はビートルズにしたかった」という監督が選んだ、ゴダイゴのポップな英語曲にのせて、どこまでも彷徨していく主人公の姿が胸に迫る。
続く監督第2作は1979年「太陽を盗んだ男」。
中学校の教師が原子力発電所に侵入しプルトニウムを強奪、自分のアパートで原爆を製造し、警察や政府に戦いを挑む。
皇居や国会でのゲリラ撮影、幻のローリングストーンズ公演など全長2時間27分、見どころ満載!1作目と打って変わってエンタテインメントを極めた作りだ。
一方、広島で生まれ、胎内被爆した監督自身の体験も色濃く投影している。
いずれもテーマは、簡単に手のでないフツーならビビッてしまうヘビーで骨太な素材だ。しかし、映画は決してテーマ、問題主義には陥らない。
あくまで「見せること」に徹し、映像だから表現できることにこだわり、スタッフ・キャストらあらゆる人間を巻き込む。
そこから圧倒的なグルーヴ感、飛躍感が生まれ、映画熱が全編に漲っている。
ホント1度でいい、あなたの、その目で確かめるしかない。
長谷川の「革命的映画術」とは、映画という自己との戦いの果てに、自ら答えを見出すこととも言えるかもしれない。
映画作家、反逆の映画監督、「長谷川和彦 革命的映画術」をいま!若者よ、見て盗め!超えろ!
※今回、長谷川監督が1991年に出演した「夢二」も上映決定!妻と妻の愛人を殺した殺人鬼という役どころ。凄みのある狂気な演技と強烈な存在感に注目いただきたい、「太陽の盗んだ男」の沢田研二が主演。
*上映のユーロスペース、アマゾンなどでは今回の開催を記念して、「長谷川和彦 革命的映画術」を出版。「青春の殺人者」「太陽を盗んだ男」のシナリオを収録。上映全作品のレビューを合わせた一冊。7月9日(土)発売。発行:A PEOPLE
長谷川和彦 革命的映画術
主催・運営 パブリックアーツ
企画・宣伝 A PEOPLE CINEMA
7月9日(土)より15日(金)まで 渋谷 ユーロスペースにて公開