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新感染半島 ファイナル・ステージ

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相田冬二


何度も何度も塗り替えられていく快感

たまたま日本では元旦に公開されるが、〈おせち料理〉の趣がある。

三段重ね、いや、3どころではない多重構造で、贅を尽くしたエンタテイメントが堪能できる、実に〈おめでたい〉一作である。

前作は破格の娯楽巨篇だったが、本作は続篇であることを冒頭から強く印象づけながらも、ジャンル映画にありがちな〈ルール化〉の呪縛から、早々に離脱する。

序盤は、庵野秀明の「シン・ゴジラ」を想起させる、局所から全体を見渡す鮮やかな視点と手際の良さで見る者を引き込む。

痛快この上ないテンポに魅了され、ずっとこのままで、と願うが、映画は間もなくそのフォームを畳み、いきなり〈エモーショナルな悲劇〉を提示し、圧倒する。

その<悲劇>が、船内という<移動する密室>で展開することから、前作の列車内というモチーフも浮かび上がるが、もちろん、そのような反復にも留まることはない。

この地点まで、おそるべきスピードで突き進むのだが、とにかく驚かされるのは、そのすべてはイントロダクションに過ぎなった、という事実だ。

やおら、映画は<本題>に突入するが、ジョン・カーペンターの「ニューヨーク1997」の記憶がやんわりと浮上してしまう、この映画的なときめきはいったいなんなのだ。

ゾンビものに厳格な愛着を抱き、頑ななフェティシズムとの心中を選ぶ人々には、ご遠慮申し上げたいが、映画というものを全方位から愉しむ度量の持ち主であれば、めくるめく世界を、とめどなく満喫できるかと思う。

気がつけば、「新感染 ファイナル・エクスプレス」のイメージははるか彼方に置き去りにされており、そこから遠く離れているはずの、まさかまさかの冒険活劇の趣さえ、あっという間に超越してしまっている。

基本的に、ゾンビに占拠された街を舞台にした物語だが、そこから想定されるあらゆる可能性が、あっけなく、何度も何度も塗り替えられていく快感のとりとめなさこそが、この映画の矜持に他ならない。

ある者はポン・ジュノの「パラサイト 半地下の家族」と関連づけて、新種のホームドラマとして語りたくなるだろうし、ある者はホン・サンスの「それから」のクォン・ヘヒョがキーパーソンとして登場することから、卓越した演技アンサンブルとして見つめるだろう。

ギミック満載のカーアクションや女性の勇敢さを讃えるまなざしの一方で、縦糸と横糸を縦横無尽に張り巡らせた<情>のタペストリーが編み上げられる。

そうしてたどり着く結末にも、幾重もの仕掛けが施されており、思わず<こいつあ、春から縁起がいいわい>と、つぶやかずにはいれない。



「新感染半島 ファイナル・ステージ」

監督:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォン/イ・ジョンヒョン/クォン・ヘヒョ
2020年/116分/韓国
英題:PENINSULA

配給:ギャガ
©2020 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILMS.All Rights Reserved.

2021年1月1日(金) TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー

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people / ヨン・サンホ

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