CULTURE / MUSIC
韓国音楽芸能ヒストリー
「韓流」以前の韓国音楽芸能史を辿る　第1回「1960年代」

韓国の大衆音楽は、1960年代に米8軍舞台から生まれたと言っても過言ではない。韓国の音楽産業がまだ劣悪だった時代米8軍舞台は、歌手たちに最も安定した生活を保障してくれた。3ヵ月ごとのオーディションで高い評価を受けてこの舞台に立ち、多くの収入を得るために、韓国のミュージシャンたちはAFKN－TV（在韓米軍放送）を介してPOPSの本場の音楽に接し、また猛烈に練習した。現在K-POPを主導するプロデューサーたちも、子どものころAFKN－TVを見て育った世代である。K-POPにおけるアメリカナイズされた音楽的な特徴は、このような時代背景と無関係ではない。

KBS、TBCに続き、1969年12月MBC TVの開局で、韓国は本格的なTV時代を迎えることになる。これを契機に、米8軍舞台に立つミュージシャンたちは、音楽シーンの前面に登場することになり、米軍相手にスタンダードジャズ、カントリー、ロックなどを演奏していた彼らが、トロット（韓国式の演歌）一色だった大衆音楽界に新風を巻き込んだ。彼らは、TV時代に照応するスターたちだった。その中でも、パールシスターズはキュートなルックスと斬新なロックビートの音楽で人気を集め、デビュー1年目の1969年、MBC歌手王になる。K-POP史上初のアイドル・ガールズ・グループとして紹介しても良いほどの絶大な人気だった。同年、キム・チュジャというディーバがデビュー、魂のこもった歌唱力に加え、セクシーなダンスで人気を得た。キム・チュジャのヒット曲は続々と映画化された。2008年にイ・ジュニョク監督がベトナム戦争を素材にし、スエとチョン・ジニョンが主演した映画『あなたは遠いところに』も、キム・チュジャの同名ヒット曲でもある。彼らを音楽界の頂点に立たせたのはひとりの作曲家で、後に“韓国ロックの父”と言われるシン・ジュンヒョンである。1964年、韓国初のロック・アルバムであるシン・ジュンヒョンとアドフォー（Add4）のデビューアルバムをリリースして以来、今日に至るまで、K-POPの歴史を語るにあたって決して欠かせない人物である。

一方、明洞一帯の「音楽鑑賞室」ではアコースティック・ギター歌手たちが新しい時代を開いていた。中でも、セシボン（C’est si bon）という音楽鑑賞室が最も有名だったのだが、ここで歌を歌っていたソン・チャンシクとユン・ヒョンジュはデュエット・ツインポリオ（Twin Folio）を結成し、1969年、韓国初のフォーク・アルバムを発表する。まだカバー 曲中心のアルバムだったが、若者たちの間で大きな反響を呼び、セシボン出身の歌手は1970年代に入って韓国フォーク・ミュージックの全盛期を築く。1969年8月にアメリカで開かれたウッドストック・フェスティバル（Woodstock Festival）の熱気が世界中に広がっていく中、9月にソウル南山（ナムサン）のドラマセンターでは、アメリカから帰国したハン・デスの公演が開かれた。長髪にジーンズ姿の彼がアコースティック・ギターにハーモニカを吹きながら、愛、平和、自由を歌い始めると、軍事政権の独裁と先行世代に抑圧されていた青 年たちは一斉にヒッピー姿のシンガー・ソングライターに熱狂した。まさに、韓国の若者文化が誕生する瞬間であった。

主な出来事
1968年 女性デュエット、パールシスターズ、デビュー
1969年 ツインポリオ、韓国初のフォーク・アルバムを発表
1969年9月 韓国モダン・フォークの父、ハン・デス帰国公演
1969年10月 セクシー・ディーバ、キム・チュジャ、デビュー
1969年12月 MBC TV開局／パールシスターズMBC歌手王
1970年 韓国TV普及100万台突破

Written by：李晟煕 イ・ソンヒ